バンコク
バンコクまでやってくると、空の汚さや、人々のせわしなさが目につく。
今までのジャングルビーチの日々とは違って、ちまたにお店が溢れている。
自然だけも良いが、都会の便利さや雑多さも悪くない。
散髪屋もあるので頭を綺麗にしてもらうことにした。
パンガン島にいた時に頭を丸めようとして失敗していたが、切り傷や日焼けあとも治ってきたので、そろそろタイミングかなと。
理容師のお兄さんも僕のヘンテコな髪型を見て目を剥いて驚いている。
仏教国ゆえに頭を剃る事には慣れているようだが。
バンコクについてすぐに、タイ北部へ向かうバスのチケットを取った。
あまり大都会で時間を過ごさずに、タイの山の田舎を先に経験して、最後の日々をバンコクの都会で過ごそうと思っている。
タイマッサージ
時間があったので、ガイドブックを見ながら色々と観光してみる。
僕の滞在している、旅人の中心地のカオサンロードから、数分歩いたところにあるお寺でタイ古式マッサージを受けられるらしいので、行ってみることにした。
このお寺では、マッサージを習うこともできるらしい。
日本だと知らないところへ行ったり、よくわからない施設に入ったりするのは苦手で、かなり勇気がいるのだが、こうやって旅行者としてタイにきていると、比較的気軽に知らない場所へ入っていける。
タイ人特有のおおらかな雰囲気や、適当な感じが親しみやすくさせているのが大きいとは思う。
こう言った感じで心が開いた状態で生活を送るのは初めてだったので、ものすごく新鮮で心地が良かった。
お寺に着くと、マッサージしてほしい旨を伝え、布団を敷いた部屋に案内される。
冷房が効いている。
アスファルトの反射熱に蒸し返す通りから入ってくると尚さらに気持ちが良い。
用意されていたシャツとパンツに着替え、剃りたての頭を覆っていたタオルを取り横になる。
マッサージしてくれる坊主頭のお坊さんが、僕の剃りたての頭を見て大喜びしている。
僕も仏教徒だと思っているのだろうか?
どちらかというとパンクスのつもりなのだが。
心の荒んだスキンヘッドのパンクスの僕でも心が和むほどにタイマッサージは気持ちよかった。
肉体的に気持ちよくて和んだと言うのが初めてだったので、こんな感覚があるのかと驚いた。
ストリップ劇場
この時にゲストハウスにいた日本人と仲良くなった。
人と気軽に話して友達になるなど、日本ではあり得なかったので、これまた驚きだが、これがタイの魔法だろう。
彼は金髪のガタイのいい東大生で、自称ストリップ研究家だという。
彼がストリップ劇場の遊び方を教えてやるという。
僕は西成のわい雑な雰囲気が好きなので、ストリップ劇場をみる事にも興味があった。
タイではエロい施設がいっぱいあり、セックスできるという話を聞いていたので、18歳の僕は興味津々だった。
僕は捩れた育ちからか、女の子と恋愛するという事に対してある種の恐怖を抱いていた。
大阪でのバイト暮らしでもいくらでもチャンスはあったのだが、奥手が勝って行動には繋がらなかった。
もしタイで機会があれば童貞を卒業したいなと思っていたが、一人でそういう所にいく度胸などないので、彼の誘いは渡りに船だった。
初めてのセックスは好きな女の子としたいって思いは誰でもあるとは思うが、僕は自分が人並みの恋愛がすぐにできるとは思っていなかったので、そんな思いは考えの外だった。
新しくできた友人にパッポン・ストリートと呼ばれる風俗街へ連れて行かれる。
タイの風俗街といわれて場末の廃れた雰囲気を想像していたのだが、実際に行ってみるとラスベガスのような煌びやかなところだった。
ネオンが輝き、若い女性たちが美を売っている。客引きもすごい。
ストリップ研究家の友人はどう行動すればいいか分かっているので、そそくさとお目当のお店へと歩を進める。
中に入ると美人の若いタイ人女性達が誘うような色目を使って踊っている。
現実で女性の裸をみるのは初めてなので、衝撃だし緊張する。
席に座り、ビールを注文する。
お店でビールを飲むのも初めての行為で、酔っ払うのも初めて。
小学生の時に叔父さんのビールを味見して、その不味さに泣いたのが前回だ。
友人は既にお目当の子を見つけてイチャイチャし始めた。
目の前で人がイチャイチャしているのをみるのも初めての話。
緊張してドギマギしてしまう。
彼らは英語で何か話しているがよくわからない。
恐らくこの後にセックスする値段の交渉をしているのだろう。
彼は僕のところへやって来て、交渉が成立したので、これから部屋へ向かうという。
僕が、状況をよく分かっていなくて混乱していることを伝えると、君にはここは向いていないから、歩いて数分のところにある建物へ行くと良いと教えてくれた。
さすがストリップ研究家、どんな状況にも対応できるようだ。
売春宿
僕が向かったのはストリップ劇場ではなくて売春宿。
ストリップ劇場は英語を話せて、会話や交渉を楽しみたい人に向いているが、英語がよくわからない人は売春宿に直接行った方が良いらしい。
向かった先にあったのは、想像を超えた大きなビル。
またも想像を裏切られる。
そこでやっていることは、法律にも違反し、仏教的モラルにも違反するのだが、タイ的な大らかさで許されているらしい。
受付でお金を渡し建物の中に入ると、ひな壇に50人くらいの女性達が並んでこちらに向けて笑顔を振りまいている。
かなりの壮観だ。
案内の人が、どれでも好きな子を選べという。
たくさんいる中から、大人の魅力を醸し出している女性を選ぶ事にした。
童貞の僕を優しくナビゲートしてくれそうな雰囲気。
こちらの売春宿はストリップ劇場とは違って流れが圧倒的に早い。
そそくさと部屋へ案内されて、そそくさと服を脱がされ、シャワーへ連れて行かれて体を洗われる。
あれよあれよと言う間にベッドに寝かされる。
さすがにベテラン売春婦だけあって展開が早い。
これ以降はエロブログではないので詳細は省くが、あまりにもあっけなく業務的に僕の初体験は終わった。
脅迫観念
今になって振り返ると、あまりにもお粗末な童貞卒業だが、それでも僕は十分に満足していた。
家族以外の女性と触れた事がなく、そもそも幼少時以降は人と触れた事がほとんどない僕にとって、人肌に触れると言う事自体が電気が走るような衝撃があり、何かが解放されたような感じがしていた。
僕は”童貞”とい言う言葉にある種の強迫観念を抱いていたように思う。
メディアによる洗脳なのかもしれないが、経験する年齢が早ければ早いほどカッコいいと思っていたし、18では既に遅いと思っていた。
エホバの証人の家庭に生まれた事に対しての、劣等感も強かったと思う。
高校の同級生よりも早く何かを体験したいと言う気持ちがあった。
みんながまだ学校に行って勉強している間に自分は童貞を卒業したんだと思うと、ものすごく優越感を刺激された。